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はじめに
皆様から頂くお問い合わせで思うことは、多くの方が水やりの仕方が分からなくて色々と試行錯誤している間に植物の調子を悪くしてしまっているように感じました。
そこで少しでも皆様のお役に立てればと、このページ作りに取り組んだのですが、この業界では「水かけ5年」とも10年とも言う位で、出来るだけ一般の方に分かりやすく簡潔にまとめたかったのですが、ケースバイケースが多すぎて一口にはうまくまとめきれませんでした。
若干分かりにくい説明もあろうかと思いますが、幾つかのタイトルに分けて作りましたので、この中よりご自分に当てはまる物をお読み頂き参考にして頂ければ幸いです。


水やりの基本
水は植物にとって、日光・空気と並んでとても重要な要素です。主に根から吸収された水分は葉に運ばれ水と炭酸ガスと日光のエネルギーを利用して光合成を行い、これによって植物が育つデンプンが作られます。肥料分は水に溶けてから根から吸収され、デンプンと化合して植物を構成する成分を作ります。
また水は葉から蒸散して、植物体の温度の上昇を防いでいます。

*水を与える時は鉢の底から少し流れ出るぐらいたっぷり与えるのが基本です。その理由は、土の中の古い空気を押し出して新鮮な空気を鉢の中に取り入れ、根に酸素を供給するためです。受け皿にお水を溜めないようにと少なめに与えたり、調子が悪そうだからと少しづつまめに与えたりすると、古い空気が残り、新しい空気の供給が不足するので、かえって根腐れの原因になります。
*水やりの時間帯は午前中に与えるのが理想で、冬は特に出来るだけ暖かい日の午前中の方が鉢内の水分が凍りにくいのでベストです。夏場などは夕方ひどく萎れてしまったような場合は一度そこで与えて、天気がよければもう一度翌日の午前中に与えます。
*水やりで失敗しないようにするには、お水を与える日もその予定のない日も、出来る限り毎日乾き具合などの植物の変化に注目することです。毎日土の状態や植物の様子を見ていると同じ植物でも育ち具合や季節、天候によって違いがあることに気づくと思います。水やり上手になる事は、全ての管理も上手なるということなのです。
 

鉢容器による違い
一口に鉢と言っても、私達生産者が使っている量産品から市販の物まで合わせると、まず大きさから・形・機能・材質など色々です。
鉢底穴で違う乾き具合
大きさ・材質が同じでも鉢でも鉢底の穴の開き方によって乾き方が違ってきます。

(イ)最近では、植木や果木の育苗鉢としても使われる事がある鉢で、穴は少なめで小さいのですが、鉢縁に沿って穴が開いているため3つの中で一番排水機能がよくできていて早く乾く部類に入ります。このタイプの鉢は表面だけでなく鉢底の土の湿り具合も時々良く見ないと、表面は湿っていても、一番根がまわっている鉢底の方から乾いてくる事があり、表面が湿っていても萎れてきている場合は鉢底も観察しましょう。その反面、後で述べますが、根に良い利点も持っています。

(ロ)注目して欲しいのは鉢底が平らで凹凸がほとんど無いところです。このようなタイプは最初のうちは水はけが良いのですが、根が下にまわってからは接地面と密着して乾きにくくなりますし、直接土の上に置くと根が張りついてしまう事もあります。しかし良く乾いて困る場合や、やや多湿を好む植物などはかえって向いていると言えます。

(ハ)一般的によくある鉢穴のものです、穴の形は四角でも丸でも良いのですが、適度に鉢底に凹凸があり水はけが良いところと適度に水分を残しているところができます。しかし、いつも過湿気味に管理をしていると、鉢ふちへ誘導された水分が鉢底のふちに「停滞水」と呼ばれる、あまり水が入替わる事のない湿ったままのエリアを作ってしまい、根腐りなどの原因になる事がありますので、時々はいつもより少しだけ乾かしてからお水をたっぷり与えるようにすると、より良い水かけが出来ます。
*中心に1つだけ穴が空いている鉢も同様の事が言えます。


(イ)

(ロ)

(ハ)

鉢の材質で違う乾き具合
鉢の材質によって乾き方が違ってきます。

(陶器鉢)
昔から植物を植える鉢として活躍してきた素材ですが、取り扱いが慎重になる事や、古くなると割れやすい・重いなどの理由から、生産者の間では一時使われる事が少なくなりましたが、最近は素朴な風合いや個性的なデザイン・高級感などからまた見直され、様々な形で使われ始めました。
プラスチックに慣れてしまっていた、私達生産者からすると、その乾き具合の早さには驚くべきものがあります。堅く焼いている物より、生地が荒く土っぽい物の方がより土の湿気を鉢の表面から蒸散させるため、早く乾くように感じますし、内側や外側に釉薬(うわぐすり)が塗ってある鉢は蒸散が少ないため乾きにくいように思います。
利点としては、鉢の表面から水分が蒸散する際、気化熱を奪うため鉢内の温度がプラスチックよりも低くなりますし、蒸散しない釉薬のかかった鉢でもプラスチックよりは熱を伝えにくいため、夏に暑がる植物には良いと言えます。それと蒸散する鉢の場合は土の中の湿気のムラを出来にくくするので、縦に長い鉢などのように、鉢内の水分状態が把握しにくくムラが出来やすい鉢を使う場合などは効果的です。
*鉢の種類によっては蒸散効果が少ない場合があります。
(プラスチック鉢)
扱いやすさ、価格の安さ、機能性の豊かさ、清潔感(コケなどが生えにくいため)などから、生産者の間で最も多く利用されている鉢です。必然的に販売店で取り扱われている植物の多くがプラスチック鉢になっていますが、先ほども述べたように乾き具合から言えば、素焼き鉢よりゆっくりで、乾き過ぎて困る場合は無難な鉢と言えるでしょう。難点は夏などに鉢に直接日光があたっていると、鉢内がかなりの高温になりやすく根の正常な働きの妨げになり、暑さに弱い植物などは、土が十分に湿っているのに植物はぐったりしていると言った状態になってしまう事もあります。その様な場合は、ひとまわり大き目の陶器鉢に入れて二重にして管理すると、地温の上昇を抑える事が出来ます。
近年、生産者向けのプラ鉢を製造しているメーカーは、より低価格で販売できる鉢を作るために、少し鉢の厚みが薄いものを提案してきています。ガジュマル・コチョウラン・バンダなどのように、ある程度根を地表にさらしているような植物は別として、根は基本的に明るいのを嫌うため、プラスチックの鉢やコンテナなどを購入される際には、内側から見て持っている手があきらかに透けてわかるような鉢は、光を通してしまう恐れがあり避けたほうが良いでしょう。


鉢の大きさ、形で違う乾き具合
鉢の大きさによって乾き方が違ってきますし、形の特徴が水やりの際のしみこみ方に関係してくる場合があります。
大鉢にありがちな傾向

大きな鉢になればなるほど、水持ちがよくなり水やりの間隔は長くなりますし、鉢内の温度変化が少なく根のストレスも軽減する事が出来ます。ただ、植えてある植物が鉢に対して小さければ余計に水やりの間隔は長くなり、鉢の表面と鉢の中程の湿り具合にも較差が生じます。持ち上げて鉢底の湿り具合を覗き込む事も困難になりますので、十分観察をして植物の様子をみて判断する事も重要になります。小さな植物をポツンと大きな鉢にいきなり植え込むと、「鉢負け」と言ってちっとも大きくなってこない現象が起きる事がありますが、植物のサイズに合せて少しづつ大きくしていく事は、実はとても良い事なのです。
小鉢にありがちな傾向
鉢が小さくなればなる程に、乾きやすくなりついでに保肥力も小さくなり肥料切れもおこしやすくなりますが、面倒な事ばかりではなく言い換えれば、植物の変化に対して俊敏な対応がしやすいサイズといえます。乾かし気味に管理をすることも容易ですし、植物の生理にあわせて肥料を切ったり、与えたり、肥料成分を変えたりと細かい調整ができます。少ない水分で植物の命をささえている小さい鉢だからこそ、一鉢一鉢丁寧な水かけをして、たっぷりと与えてください。


「ウォータースペース」
について
土の表面から鉢の高さまでの空きスペースの事で、お水をあげた時にいったんここに水が溜まり、その後土の中に染み込んでいきます。つまりこのスペースが少なすぎた場合、たっぷりお水を与えているつもりが、鉢からあふれてしまい思いのほか鉢の中には浸透していない事も。小鉢の場合多く取りすぎると当然土の入るスペースが少なくなりすぎますので
3.5号ポットくらいまでは5mm位   4〜5号鉢で1cm位  以後1号大きくなるごとに5mm位づつ大きくしていきます。


(ニ)

(ホ)

(ヘ)

(ト)

分りやすいように、かなり極端な形を例にしてみました。
(ニ)鉢の口の広さと・深さ・鉢の絞り具合が水やりには丁度良い標準タイプといえます。通常のウォータースペースがあれば、たっぷりお水をあげるだけで十分な水やりができます。

(ホ)鉢の口の直径の1.5倍以上の深さがあり、細長いタイプの鉢です。根が縦に伸びる性質の植物には適していますが、大きい物程地表面と底で乾き方に差ができ易く、植えつけ直後のように根が鉢底の方まで伸びていないのであれば、毎回底からしみだす程水をやらない方が、過湿になりすぎずかえって根が底へ伸びやすいので、調節して下さい。また、土の量に対して鉢の直径が小さいため、通常のウォータースペースよりも多めに取っておきましょう。

(ヘ)このように鉢口よりも鉢底の方が広く深いつぼ型の鉢は、なかなか鉢土全体に水がゆき渡る事が難しいので、ウォータスペースを多く取っておきます。注意することは、根の生育が旺盛な植物は鉢全体に根がまわってしまうと、抜き取る事が困難で植替えの際には鉢を割らなければならない事も。

(ト)鉢口が広く深さが浅いボール型の鉢は、通常のウォータースペースがあれば、たっぷりお水をあげるだけで十分な水やりが出来ますが、一方行からお水をあげていると反対側まで水が回っていない事に気が付かないときがありますので、株が鉢を覆っているような時は特に注意して下さい。鉢の表面積が広いため、植物が利用する水分以外にも地表から蒸散する量が多いため、夏場など乾きやすい時には乾くタイミングをつかむまではこまめに様子を見るようにします。


鉢の機能で違う根の状態
鉢の機能によって根の回り方が違ってきます。


(チ)

(リ)

(ヌ)

(ル)

(チ)鉢底から給水ひもが出ていて毛細管現象で水を吸い上げる事で上からの水やりの必要のない「底面給水鉢」です。育てる段階から底面給水式で行う場合がほとんどですが、最近では水やり初心者や留守がちな方のお助けアイディアとして、購入してきた鉢植えに給水ひも(フエルトや不織布でよい)を差し込み、ひと工夫して底面給水式で育てる方もみえるようです。このタイプで育てた植物は、水分が鉢底の方に多く存在するため、必然的に根が底の方に集中しやすくなります。冬期、底面給水用の水が凍るような寒い所で管理する植物の場合は、かえって上からの水やりに戻した方がよいのですが、底に根が集まっているため特に最初は鉢底まで水が行き渡るようにたっぷりと与える事が重要です。通常売られているこのタイプの鉢は見栄えやバランスからそれほど多くの給水スペースが無く、多く水を必要とする時期や植物の大きさによっては1〜2日でなくなってしまう場合もあるので、まめにチェックしたり大き目の受け皿を用意してあげると
数日間水が見れない場合でも、水切れを起こす心配がなくなります。

(リ)と(ヌ)は同じ様なポリポットですが、鉢穴の位置に違いがあります。(リ)のふちに幾つか穴のあるタイプは排水性が良く、さらに鉢底のふちを回る根が所どころで光に当たるため、光を嫌って鉢土の中を回ります。そのため根詰りが遅く、鉢内の隅々に根が回りやすくなります。反面乾きやすいので注意が必要です。

(ヌ)の一つ穴のタイプは、鉢のふちに沿って根が下へ入り底に当たってからループし始めます。そのため、鉢の底の方に根が固まって早く根詰まりをおこしますが、早めに植え替えたり根詰まりしている鉢は、植え替える際に底の根をほぐして植え替える、などすれば大丈夫です。

(ル)は(リ)と同じ様な効果のあるプラスチック鉢。

季節や植物の性質によって違う水かけ
植物は季節やそれに合わせた生育過程によって水分の要求度が変化してきます。


ほとんどの植物が生長を開始する時期です、状態を日々観察し新芽が動き始めたら傷めてしまわないように。


工事中です

 
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